やっと戻ってきた


もう2度と離さない


もう2度と逃がさない



「ユ・・・ッ?!」

急な展開についていけず、海斗の頭は混乱した


本気で抵抗するも、祐樹は力任せに申し訳程度に羽織っていた海斗のシャツを取り去り

あらわになった首筋に唇を寄せ、痛みを生み出していく



「なっ・・・やめ・・・やだっ!!!ユウッ・・・んふっ」

言葉すらも深い口付けに飲み込まれてしまう



もしかして・・・という不安が海斗の頭の中を占めだしたその時










「・・・消毒だ」

「へ?」

ようやく離れた唇が紡いだのは、予想外の言葉


消毒・・・

って何の?



「田中の野郎、俺よりも先にお前に手ぇ出しやがって・・・」

「!!」

混乱する海斗を余所に、祐樹は再び海斗を味わおうと唇を近づけていく




しかし



「忘れてたぁーっ!!!!」

「?!」

祐樹の唇を両手で塞ぎ、海斗はベッドから飛び起きた



「ユウッ!!今・・・今何時だっ?!」

「・・・あー・・・10時半位か?」

「なっ?!やばいっ!!!」


突然の行動に呆気にとられる祐樹には目もくれず、

海斗はベッド付近に落ちていたシャツとスーツを見つけるとそれを急いで着込む


「・・・何処へ行くんだ」

スーツがそこまで皺になっていなかった事に安堵する海斗に近寄りながら、祐樹は眉間に皺を寄せた


「何処って教室だよ、3ーF。俺、今日の4限目に初授業があるんだって」

祐樹の登場にすっかり流されてしまっていたが、今日は平日の上に始業式から2日目


新米教師である自分にとって初めて『授業』がある


その事実を祐樹の言葉が、『田中=和馬=3-F=初授業』と海斗に思い出させたのだ



「荷物は職員室に置いてあるから・・・後は・・・」

「・・・」

ブツブツと呟き始めた海斗を見つめながら、祐樹の眉間は更に深い皺が刻まれていく


1度集中したら、目的が達成できるまで自分の意思を曲げる事が出来ない海斗だからこそ

現在の自分の状況と、変わり始めた祐樹の雰囲気に気付く事はなかった




「悪い、ユウ。俺、職員室に戻らな「休め」・・・え?」

「休めよ、そんなもの」

乱れていた衣服を直している海斗の手を止め、祐樹は無理矢理自分の元に引き寄せる

「なっ?!俺は教師なんだ。生徒は休めても教師が授業を休む事なんて出来ないよ」

「あんな雑魚クラスの授業なんてどうでもいいだろ」

「っ!!」



バシッ



「・・・あ・・・」

仮眠室に乾いた音が鳴り響き、海斗は自分のした事に思わず体を凍らせる

目の前の祐樹は、頬に手を当てながらこちらを無表情で見ていた






「っ・・・ごめん」


ユウを叩いてしまった・・・


ジンジン、と熱くなる掌を握り締めながら、海斗は視線を床へと移す


先程の言葉を聞いたとき、脳裏には先刻自分を温かく迎えてくれた彼らの笑顔が浮かんで

どうしてもユウの言動が許せなかった



「・・・でも、あいつ等の事をそんなに悪く言うのはやめてほしい」

全く動こうとしない祐樹にもう1度叩いてごめんと謝ると、海斗はゆっくりと出口へと歩み始めた



「じゃあ、俺教室に戻るから・・・」



パタン




「・・・!!」

自分を叩いた海斗の姿を唖然と見つめていた祐樹は、扉が閉じられた音にようやく我を取り戻した


叩かれた頬が熱を帯びる


喧嘩の時ですら、顔を殴られる事は指で数える程度でしかない


先程まで自分を求めた手で、頬を叩いたあいつ


「・・・やっぱりあいつしかいねぇ」

にやりと口端を歪めると、祐樹は漸く歩を進めた


いつも予想外の行動をし、唯一自分の思い通りにならなかった人物が

再び自分の元へと戻ってきたのだ


もう2度と離すものか


もう2度と逃がすものか



まるでガキのような独占欲を抱く自分に笑えてくる


「夜中にでも迎えに行くか」


学園の教師であれば、風紀委員長の自分が部屋の番号を手に入れるのは容易い

もちろん、部屋に入る事も・・・

久しぶりにあいつの体を抱けるかと思うだけで、全身が異常に興奮する


俺の頬を叩いたことも

田中にキスされたことも


問い詰めるのはその時でいいか


好きだと告白した海斗の姿を見て、自分の中で少なからず余裕が生まれていた事に

祐樹は気付くことはなかった





プルルルルッ


購入してから設定を変えた事のない携帯から、ありきたりな着信音が流れ出した

崩れた制服を直しながら、祐樹はズボンのポケットから振動を続けるそれに手を伸ばす


電話帳すらまともに登録しない携帯の画面には携帯番号のみが表記されていた


「・・・なんだ」

『に、二宮様っ・・・』


男にしては酷く高めの声が耳に届く


『突然すみません・・・あの・・・あの・・・「部屋は何処だ」・・・あっ!!408ですっ』


知らない携帯番号は、大抵はセフレとも言えない体だけを利用してきた奴等のもの


自分にとって気持ちの伴わないセックスなど、ただのストレス発散にすぎない

今はカイの色気に刺激された体の疼きと、苛々を止めるのに調度良かった



今から行く、とだけ話し携帯を切ると、祐樹は示された部屋に向かうため仮眠室の扉を開けた





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【2008/05/29 19:43】 | #[ 編集]














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