異世界トリップの続きです。

主人公:鈴村 拓哉(スズムラ タクヤ) 通称 スズ

友達:大木 明孝(オオキ アキタカ) 通称 タカ

でお送りしています。


異世界行っても大丈夫、な方のみ続きからご覧下さい。

※『』は異世界の言葉



「□※、▽$▲◎ф」

「どうぞ、お食べください。だってさ」

「・・・お、お食べって言ってもさぁ」



スズは笑顔で自分の側に控える、赤い髪の女性をちらりと見つめて

目の前に並べられた食事の量に、肩の力を抜いた


2人が向かい合わせに座る大きなテーブルの上には、隙間なく埋められた色彩豊かな料理達


どれも見た事がない料理ばかりだったが、この訳の分からない世界に着いてから

気絶してばかりで何も食べていないスズの胃を刺激するには十分で

香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる



唯一、スズの食欲を奪うものといえば




「・・・なんなんだ?お前と俺とのこの距離感は」


「・・・さぁ?」


先程、赤髪の女性の言葉を訳してくれたタカは、何故か4メートル以上も離れたところに座っており

長方形の長机がより一層自分との距離感を際立たせていた




突然の空中飛行と墜落の衝撃から目が覚めると、

医者らしきお爺さんに身体中を検査され

彼の言葉が分からない俺は、横で安心するように溜息をついたタカの様子から

まぁ大丈夫なんだろうと感じ取った


それからすぐに、俺とタカはこの部屋に通されて

あっという間に目の前の机に食事が運び込まれて今に至るんだけど



・・・ご飯はもっと近い距離で食べた方が美味しい気がする



兄と2人で食べる事が多いスズは、自分達の微妙な距離に納得が出来ずにいた



「とりあえず、食べようぜ?」

唸りだすスズに痺れを切らしたのか、タカが声を張り上げる


実は先程から2人とも、遠くの相手に向かって大声で話し合っていたのだ



「・・・そうだな」

「「いただきます」」



(食べ始めの挨拶は、作ってくれた人に感謝を示す大事なものだから、何処行っても忘れないようにね)

久々に感じる手を合わせる感覚に、スズは兄貴の言葉を思い出す



兄貴に成さん、今頃俺達の事探してんのかな

学校とかどうなってんだろ



急に思い出した日本の存在に、スズは表情を曇らせた



「スズッ、案外美味いよ、これ」

「マジ?」


見た目の割りに大食いなタカが、笑顔で料理を食べる姿に

慌てて自分もフォークを持ち、1番近くにある料理に手を伸ばす



・・・とりあえず、ここが何処でも日本に戻ろう



そう決意して、酢豚のような料理を口に含んだ
















「・・・っ!!甘っ!!!!!」

口から噴出しそうになるのを必死に押さえ、スズは近くにあった水で料理を無理矢理流し込んだ


「なっ・・・なんじゃこりゃっ!!!」

見た目と予想外の甘さに、スズは目を疑った


目の前にあるのは、一見酢豚っぽい餡が絡められた野菜炒め

野菜の味も確かした気がするが


明らかに甘い



あまぁーーい!!!(某芸人風)



「・・・ハハハ。まぁ、言葉通じないし、料理が見た目どおりじゃない事もあるか」


焦る心を落ち着かせると、スズは甘い酢豚(に見た目が近い料理)を自分から離し

今度はミートボールに見えなくもない、何かの丸い塊を口の中に入れてみる


「うぐっ・・・これも甘い・・・」


肉か何かだと思ったそれは、先程の甘い酢豚(に・・・以下略)よりもさらに甘かった


「嘘だろ・・・」

まさかと思い手当たり次第に料理を口の中に入れてみるものの、見事に全てが甘い


どちらかといえば辛党派なスズにとって、ここまで見事に甘味が揃えられると

今まで早く食物を取り込めと騒ぎ立てていた胃袋も、その勢力を弱める他ない


一気に、食欲なくなった・・・


げんなりと、フォークをテーブルに戻したスズは

料理を少しずつ口に運んでは、水を一気に飲み干していた自分の姿を

水を継ぎ足していた赤髪の女性が、奇妙なものを見るような目で観察していた事に気が付かなかった



「・・・はぁ・・・」

「・・・Θ▽$、※Дω?」


「・・・ここの人間はいつか高血糖になるぞ」

「Θ▽$、※Дω?」

「へ?・・・俺ですか??」

「・・・ф、※Дω?」


眉を顰めて俺に話しかけてきてるけど、何を言っているのか全く分からない

あぁ・・・日本語が恋しい


「ちょ、ちょっと待って下さい・・・タカー、翻訳頼むー!!!」

「むぐむぐ・・・んっんー!!」

口から零れ落ちんばかりに甘い料理を詰め込んだタカが

オッケー、と頭の上で丸を作ったのを確認し、俺はとりあえず人差し指を立て

ジェスチャーで『もう1度』と女性に伝えてみる



一応意味が通じたらしく、女性はタカの側に控えて何かを話し出した



「・・・『1回』のジェスチャーは万国共通なんだ」

その様子を観察しながらも、スズは自分の人差し指の力に感心していた




世界を超えるなんて

恐るべし、ジェスチャーの力


まぁ、これから逐一タカに翻訳してもらうのも面倒臭いしな



・・・あれ、俺なんか忘れてないか?










「ああーっ!!!」

「っ?!なんだよ、急にっ」

突然響いた大音量の声に、タカと赤髪の女性はその発信源を見やる

そして当の本人は、ある人物を睨みつけていた


「タカッ!!!そういえばお前、なんで言葉分かるんだよ!!」


同じ日本人なのに、自分の分からない言葉を理解する友人を。


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