願い事、1つ-8-
異世界トリップの続きです。

主人公:鈴村 拓哉(スズムラ タクヤ) 通称 スズ

友達:大木 明孝(オオキ アキタカ) 通称 タカ

でお送りしています。


異世界行っても大丈夫、な方のみ続きからご覧下さい。






※「」は日本語です


「『御二方に何事もなくて、安心致しました』だって」

「本当にすいませんでした」


タカの翻訳を聞いて

目の前に並んでいる護衛達に向かって、スズは深々と頭を下げた




何故こんな事になっているかというと・・・





タカに向かってスズが大声で叫んだ後

突然扉を開けて、剣を持った男達が侵入してきたのだ


あまりの恐怖に、スズとタカは思わず悲鳴を上げ、その声によって更に人が増えた


慌てて赤髪の女性が護衛で1番偉そうな人に状況を話して、騒動は治まったが


その騒動を聞いた青紫頭やオレンジ頭、ついでに見た事がない黄緑色の髪の男まで現れて

スズは今後紛らわしい声を上げないようにと厳しく怒られた



言葉が分からないから、タカに翻訳してもらいながらだったけど

困った顔をしているタカや赤髪の女性の様子から、俺は本当に大変な事をしてしまったらしい


『ここは王宮です。常に皆が警戒心を抱いている事を忘れないように』

って黄緑頭の人が俺を睨みつけながら、言ってたけど


俺、ここが王宮とかその時初めて聞いたし



3人が出て行った後、さすがに申し訳なくなって

迷惑をかけてしまった護衛さん達に謝る事をタカに頼んで、冒頭に戻る。








「はぁ・・・」

「何溜息ついてるんだよ」

「なんか俺、付属品みたい」

「何をバカな事・・・」

笑いながらタカは柔らかなソファーに体を埋めた

その隣にスズも座り、お茶の準備をしてくれている赤髪の女性、プルアを見ながら再び溜息をついた


脳裏に蘇るのは、先程の出来事


頭を下げたスズとタカに対して、護衛達は酷く焦ったように『顔を上げて下さいませ』と連呼した

しかし、その視線は主にタカを捕らえていた事に気付かぬ程スズもバカではなく


ようやく自分とタカの待遇の違いを理解したのだ



薄々気が付いてはいたものの、本格的に自覚すると

スズには、自分が要らない人間だと思えてならない


溜息も尽きる事はなかった



「ところでさ、何でタカは言葉が分かるんだ?ここの言葉日本語じゃないけど」

そういえば、とスズは忘れていた話題を思い出す

今回の騒ぎもそもそもはこれが原因だったのだ

「あ、それなんだけど・・・これのおかげなんだよな」

そう言ってタカは自分の髪を掻き揚げる

「ん?なんだそれ」

露わになった耳元で光っている物をスズの視線が捕らえた

スズの知っているタカの耳にはいつも銀色のカフスがついていたが

カフスの姿はなく、あるのは青く光る小さな石


「このピアスのおかげで俺は言葉が分かるし、話せるんだよ」

「・・・」

「なんだよ、その目」


タカは『バカか、こいつ』とでも言いたそうな顔のスズを睨む


「だって、ありえないだろ」

そんなピアス1つで訳の分からない言語を理解して話せるようになるなら、英語の授業はいらないって


「・・・だったら、自分で経験しろよ。俺だって信じられないんだから」

ほらっ、と自分の耳からピアスを外し、タカはスズに差し出した

「えー・・・俺がピアス空けてないの知ってるだろ」

見た目が派手なくせに、スズはピアス等に全く手をつけない

これは鈴村家の家訓『産んでもらった体に傷を付ける奴は最低だ』に則っているためだった

「スズはチキンだからな」

「なっ?!」

「冗談だって。とりあえず触れてれば良いみたいだし、握り締めてプルアさんに話しかけてみろよ」

仕返しとばかりに、笑うタカに怒りを覚えながらも

スズはタカの手の平に光る青い石を見つめた



タカの話が嘘でも本当でも試してみる価値はあるかな



スズは決意を決めてピアスへと手を差し伸べた











バチッ

「っ!!」

「うわっ!!」



ピアスにスズの手が触れた瞬間、静電気のような痛みが指先に走った

痛みを感じたのはタカも同じで、勢い余ってピアスを肌触りの良い絨毯へと落としてしまった


「なんなんだ、一体・・・ん・・・スズ?どうかしたのか??」

『どうかなされましたか!?』


痛みに手を擦り合わせながら、タカが同じ痛みを味わったであろう相棒を見つめると


そこには手を上げたまま固まるスズの姿


プルアが心配そうに駆け寄ってきたが、ピアスに触れていないタカには異国語にしか聞こえない


「スズ?スズ??」

『スズ様?』

固まった体を揺さぶってみても、瞳の焦点がタカに合う事はなかった












タカとプルアが必死にスズの名を呼んでいる頃

当の本人は痛みと同時に流れ込んできた映像に心を捕らわれていた



『お父様どうしてっ』

『お前は騙されているのだ。いい加減目を覚ませ』


体のラインが良く分かる、真っ黒なドレスを着た黒髪の綺麗な女性

女性と対照的に全身真っ白な衣装に身を包み、髪すらも白い大男


何かを言い争っている様で、女性が男の服を掴み悲痛な声を上げていた



『あの人は私を騙してなどおりません!!』

『良く考えろ。お前とあの男は住む世界が違うのだ』


真っ黒な瞳は涙を零し、涙が白い布に染み込んでいく



「・・・この声」

スズは、大男の声に聞き覚えがあった


・・・『願い事は何だ』


それは、夢で何度も聞いたあの声



『お父様っ』

『お前の願いは聞けん』


突き放すような低い声が辺りに響く


そのまま大男は居なくなり、崩れ落ちた女性だけがその場に残った




「・・・あの・・・大丈夫、ですか?」

スズは慌てて女性の元へと駆け寄り、頼りな気に震える肩をゆっくりと撫でる

近くで見る女性の髪は、闇の様に黒く、しかしシルクの様に輝いていた



『どうして・・・どうして・・・』


スズの存在に気が付かないのか、そのまま涙を零しながら女性はドレスの端を握り締める



・・・苦しい、胸が凄く苦しい



何故かその姿を見ていたスズの瞳からも、次々と涙が溢れてきた

まるで、自分自身に起こった事のように苦しく、辛い感情がスズを襲う




『・・・スフィー、ごめんなさい』


1番悲痛な声が耳に届いたと思った瞬間、スズの視界は黒に染められた



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ちょっとトラブルがあって、更新が遅れてしまいました。
すみません 汗

【 2008/07/04 01:00 】

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