『許さない』
確かにユウはそう言った
決して聞きたくなかったその言葉
「・・・して」
どうして
「ユ・・・ったんだろ」
ユウが裏切ったんだろ
嗚咽と共に、声にならない叫びが俺の喉を通り抜けていく
まるで駄々をこねる子供だ
そう、何処かで客観的に見ている自分がいた
「も・・・離せよっ!!」
「!!」
唇を噛み締めて、溢れ出す涙を堪えながら
海斗は渾身の力を込めて、両手を梗塞するユウの手を剥がした
「・・・分かったから」
自由になった手で肌蹴たシャツをかき集めると、海斗は倒されていた体を起こす
「ユウが俺の事・・・嫌いだって分かったから・・・」
もう傷を抉るのは止めてくれ
消えそうな声で呟く海斗に、ユウは眉をひそめた
「・・・分かってねぇよ」
低く唸るような声が、海斗の耳に響く
「っ・・・分かって「分かってねぇっ!!」・・・な・・・」
服を掴む手を見つめたまま抗議の声を上げたが、ユウの怒号にかき消されてしまった
声と同時に、肩を思いっきり掴まれる
「カイ」
「・・・っ」
肩を掴んでいる手が、顎へと伸ばされ
海斗の震える唇をなぞった
優しいその手付きに、海斗は固く閉じていた瞼をゆっくりと開き
鼻先がくっつく程まで近づいていたユウの顔を見つめた
間近で眺めるユウは、羨ましい位に格好良い
今、自分に触れている指先も
こちらを見つめる強い光を宿した黒い瞳も
付き合っている頃は、何度も独占したいと思っていた
そんな事、叶わないと分かっていたのに
「うっ?」
ふと頬に感じた熱が、海斗は意識を現実に戻した
「お前は・・・よく泣くようになったな」
その熱の正体はユウの唇
少し濡れたソレに、海斗は自分が再び涙を流している事に気が付いた
確かにユウに会ってから俺は泣いてばかりだ
女々しい、って言いたいんだろうか
「・・・お前のせいだよ」
海斗はこちらをじっと見つめるユウを睨みつけた
ユウのために流す涙なんて、とうの昔に枯れたはずだったのに
「どんなにお前が俺を嫌いでも・・・俺は・・・っ」
あんたが好きなんだ
そう伝えたいのに
無意識に喉が絞まり、声が出なくなる
このたった一言をあんたに告げれば
素直に告げれば
俺はまた、隣に並べるんだろうか
なぁ、ユウ・・・
俺は近くにいたユウの襟を引き寄せ、その唇に自分のを重ねた
「・・・好き・・・だ・・・」
これが
俺の人生の中で1番素直になった瞬間だった
<back/
next>プロローグから読む第一章から読む第二章から読む第三章から読む第四章から読む第五章から読む